初食膳の男女の色は?

精「初食膳」という言い方は、東京の方ではあまりしていないのではないかと思います。
私どもは、「お食始(おくいぞめ)」「お食べ初(おたべぞめ)」という言い方をしています。食うというのは汚いというので、お食べ初という言い方をしていますけれども、そこにお膳をつけるのは、関西からきた方が多いみたいです。

関西では、初食膳に色が決まっています。ここでやっかいなのが、男の子と女の子に使う色が、人によって反対なのです。ここに折られる方も二つの捉え方があると思います。実際には何が正しいのかを、ちょっと探ってみたいと思います。
先程の色からすると、東が青、西が白、北が黒、南が赤。そして、横線は女性ですから、横の色は女性の色、縦の色は男性の色というのがひとつ。厄介なことに初食膳は赤と黒なんです。縦線の世界に入ってしまうんです。
なぜ初食膳を赤と黒にするかというと、一族繁栄で縦の線、家系というのは縦線ですから、家系が続くようにということで縦の線の中で黒と赤を使ってきたわけです。これをみますと、ほとんどの方が、女の子は派手な色の赤、男の子は黒という答えが多いようです。
しかし、ここに陰陽説を使いますと、少し意味合が違ってきます。青の場合は春の場所、赤の場合は夏の場所、白の場合は秋、黒の場合は冬です。北から東と、西から南に斜の線を引きます。これは鬼門線といいまして、表鬼門と裏鬼門に分けます。
春から夏の場合は、非常に陽があたる場所です。東南の場所を陽の場所。秋から冬は暗いですから陰の場所。こうして二つに分けます。もう皆さん、気づいておられると思いますが、陽は男性、陰は女性である、と。
そうしてみますと、赤が男性の色、黒が女性になる。ですから、初食膳は女の子だから赤というより、陽の世界の象徴の赤と、陰の世界の象徴の黒であるというのが、本来の考え方であろうと思います。

もうひとつ、十二支というのがあります。子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥。動物の名前を当てはめていますが、動物とはあまり関係ありません。それぞれ意味があって、たとえば、卯と酉あたりをみますと、「卯」というのは門が開くという形で、門構えをみせています。東側で太陽が上がるから門が開くという意味です。「酉」という字は酉に閂が入っています。太陽が上がって門を開き、陽が沈むときに酉に閂をかけて門を閉めるということで、門を開いたり、閉めたりというのが、この横線の意味です。
北方の場所に子(ね)が書いてあります。「子」は中国では孔子さま、老子など子がついているケースがあります。なぜコウコ、ロウコと読まないかということですが、北方は物事を学ぶ学習の場だといいました。ですから、昔の中国で人の何子(し)をつけた場合は、学問の達人、そうとう学問的レベルの高い人に子をつけたのです。孔子、老子、韓非子などです。中国では、それが基準だったんですけれども、日本に入ってからは女の子に子(こ)をつけている名前が多い。なぜ子をつけたのかといいますと、俗説では、子年は子だくさんなので、いっぱい子どもをつくれといっています。
じつは、北方の場所は本妻の場所、北の政所の場所です。生まれた娘が偉い人の本妻になってほしい、同時に格調高いなかで子どもを育ててほしい。そんな意味合いがあって、女の子には子をつける場合が多くありました。子でなくて江戸の「江」、シズ江、かず江とかをつけますが、サンズイは水を意味します。これもやはり、北方を意味しているということで、日本では女の子に子、あるいは江というサンズイをつけますが、北の政所になっていただきたいという意味合いがあります。
北の場所は黒で、女の子に黒というのも大切な意味合いがあるということで、重ねていただいたらいいと思います。


中村嘉男氏(算命学総本校 高尾学館学校長)講演より
於:2001年7月18日 ホテル日航プリンセス京都